【一般相対論】一般相対性原理の動機づけとその導入

一般相対論における一般相対性原理

この記事では、地上にいる観測者と自由落下する観測者を考えることで重力と慣性系の概念について再考し、それをもとに一般相対性原理を導入する。

目次

一般相対性原理の動機づけ

自由落下するエレベーターの中にいる慣性質量 $m_{I}$、重力質量 $m_{G}$ の観測者と、それを地上で見ている観測者を考える。

地球の重力場による地上の重力加速度を $g$ とする。

このとき、地上の観測者から見ると、自分は重力と地表面からの抗力がつりあって静止した慣性系にいて、このエレベーターが下向きに重力 $F_{G}=m_{G}g$ を受けて運動しているように見える。

運動方程式より、このエレベーターの加速度 $a$ は、

\begin{equation}
a=\frac{F_{G}}{m_{I}}=\frac{m_{G}}{m_{I}}g
\end{equation}

となる。

つまり、地上の観測者からみて、エレベーター内の観測者は非慣性系にいる。

一方で、等価原理 $m_{G}=m_{I}$ が任意の物質に対して成り立つことから、エレベーターの中にいる観測者は、重力を感じずに「自分は静止している」と思うだろう。

つまり、エレベーター内の観測者は慣性系にいる。

等価原理により、地上の観測者からみると、エレベーターとエレベーター内の観測者は同じ加速度で運動している。

エレベーター内の観測者から見ると、地上の観測者は地表面からの抗力を受けて加速度運動する非慣性系にいると考えるだろう。

このように、重力は観測者によって存在したりしなかったりするため、慣性系の概念が曖昧になってしまう。

これを表にまとめると以下のようになる。

スクロールできます
基準自分相手
地上の観測者慣性系非慣性系
エレベーター内の観測者慣性系非慣性系

どちらの観測者も、自分は慣性系にいて、相手が非慣性系(加速度系)にいると思っています

一般相対性原理

このような重力に関する問題点を考察し、Einstein は、重力を質点に働く局所的な力の概念(ニュートン力学における $F_{G}=m_{G}g$ )と捉えることを放棄して、慣性系の概念を時空の局所的な領域にも適用すれば良いことに気づいた。

つまり、

  • 地上の観測者の系は、地表面からの抗力以外には局所的な力が加わっていないから、慣性系とみなすことを放棄する。
  • エレベーター内の観測者の系は、上の例から明らかなように大局的な慣性系ではない。しかし、局所的な力は何も加わっていないから、エレベーター内という局所的な領域において慣性系とみなす。

このような時空の局所的な領域における慣性系を局所慣性系という。

1915年、Einstein は局所慣性系にまで物理法則の不変性を要求した一般相対性原理を提唱した。

一般相対性原理
  1. 物理法則はすべての局所慣性系で同一である
  2. 真空中を伝播する光の速さはすべての局所慣性系で同一である

真空中を伝播する光の速さ $c$ は国際単位系において定義定数であり、$c=299792458\,\rm m/s$と定められている。

光速は定義定数なので、誤差はないです

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