物理学科に就職先はないのか?に対する考えと理由を詳しく解説

  • 物理学科に進学したいけど、就職しにくいという話を聞いて不安
  • 物理学科の先輩から就職に関するリアルな話を聞きたい

これらは物理学科に進学しようと考えている高校生によくある悩みだと思います。

実際、「物理学科 就職」で検索すると、「物理学科 就職 ない」などと出てきます。

物理学科の就職

この記事では、実際に物理学科を卒業した私が、就職が不安だけど物理学科に進学したい高校生に対して自分なりの考えをお伝えしたいと思います。

あくまでも私自身の経験や周囲の方々の話を踏まえた一意見ですので、参考程度にしてください

目次

結論:物理学科にも就職先はある!

これが私の結論です。

過度に就職を心配する必要はないと思います!

物理学科に興味があるなら、ぜひ自信を持って進学してください!

このように思う理由についてこれから説明していきます。

就職を過度に心配する必要がないと思う理由 2 選

ここでは、「民間企業への就職」を前提として話を進めます。

ポスドク問題があるアカデミアへの就職等は除きます

①物理学科では社会人として必要な基本的な能力が身につくから

物理学科で身につく能力として、例えば、

があります。

それぞれ説明していきます。

論理的思考力

論理的思考力とは、論理のギャップや矛盾がないように筋道を立てる能力です

高校物理は暗記科目というイメージが強いかもしれませんが、大学で学ぶ物理学はそうではありません。

例えば、高校で学ぶ力学は、古典力学やニュートン力学とも呼ばれ、次の 3 つの公理に基づいて展開されます。

ニュートン力学の公理
  • 慣性系の存在(慣性の法則を再解釈したもの)
  • 運動方程式
  • 作用・反作用の法則

公理とは、理論の出発点(前提)のことです

つまり、ニュートン力学において、物体が落下する様子や振り子の運動、惑星の軌道などのさまざまな物理現象を解析するための(共通の)前提が、この 3 つの公理だけということです。

公理を前提に、論理のギャップがないように議論を進めていく(式を立てて、計算していく)ので、必然的に論理的思考力が鍛えられます。

物理学を勉強することが、自然に論理的思考力の訓練になっているイメージです

また、物理学科には講義のほかに演習もあります。

演習では解いた問題を学生の前で発表することがありますが、その発表に論理のギャップや矛盾がある場合、先生や TA 、学生から指摘を受けます。

初めはなかなか難しいのですが、発表回数が増えていくと、次第に論理的思考力が養われていきます

批判的思考力

物理学科では、論理的思考力のほかに、批判的思考力も鍛えられます。

批判的思考力とは、情報や何かの結論に対して「前提は何か?」「本当に正しいのか?」「本質は何か?」などと考える能力です

いろいろな視点から物事を考える能力とも言えるかもしれません

演習の例では、他の学生の発表を聞きながら、

「あれ?いまの仮定だとそこまでは言えないのでは?」

「その条件を使えば、もっと制限を課すことができるのでは?」

「いま仮定したその条件はこの証明には必要ないのでは?」

などと考えることができます。

物理学に限らず、情報に溢れる現代だからこそ、

物事を批判的に捉える能力は重要だと思います

物理学科ではそのような批判的思考力も鍛えることができます。

コミュニケーション力

コミュニケーション力とは、相手が伝えたいことを理解したり、相手にわかりやすく伝えたりする能力です

まず、演習や実験などを通して、コミュニケーション力を鍛えることができます。

物理学科では、発表やグループワークをする機会が多いです

そのほかにも、4 年生になると、卒研発表や学会発表など人前に立つ場面が増えていきますが、自分の研究を論理的にわかりやすく伝える能力が身についていきます。

コミュニケーション力は慣れの部分が大きいので、物理学科を過ごす中で自然と上手になっていくことが多いです。

このように、物理学科では社会人で必要となる基本的な能力を鍛えることができます。

もちろんこれらの能力は、きちんと物理学に励んだ結果として付いてくるものです

②先輩や同期で就職先が全く見つからなかった人がいないから

これまで述べてきたように、物理学科で熱心に学んでいる学生はいろいろな能力を身につけていきます

「大学は人生の夏休み」と言われることがあります。

客観的に考えて、そのような時期にこれだけ勉学に励んだ学生が働く場所が全くないと思いますか?

事実として、

先輩や同期で 1 社も内定がもらえなかった人は私の知る限りいません

就職先の業種・職種の例
  • メーカー
  • エンジニア
  • 営業
  • コンサルタント
  • などなど

ただし、必ずしも希望した職種や業種に就くことができるとは限りません。

例えば、IT エンジニアを志望する場合、工学系の学生より実務経験が劣ることは確かなので、選考に受かるための準備がより必要になります。

卒業研究などで忙しい時期に、(研究に直接関係しない)プログラミングを勉強したり、エンジニアの志望動機を考えたりするのは非常に大変なことです。

しかし、新卒採用の場合は特に、ポテンシャル採用をする民間企業が多く存在します

自分なりに勉強して、内定をいただくことは不可能ではありません

また、文系の友人の中には 4 年生の冬まで内定がもらえなかった人が何人かいましたが、物理学科ではそのような人は(私の知る限り)いなくて、遅くとも 4 年生の夏までには決まっていました

大卒の就職活動は、一般的には 4 年生の春、つまり 3 月から始まります

最後に

この記事では、「物理学科に就職先はないのか?」に対する私なりの考えとその根拠を解説しました。

物理学科の学びを通して社会に出てから必要な力を身につけられるので、過度に就職を心配する必要はないと思います。

物理学科を学びたい気持ちが強いなら、その背中を押してあげたいです!

物理学科の学生に役立つサイトを作っていますので、ぜひほかの記事も覗いてみてください。

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