勾配の定義
位置 $\boldsymbol{r}$ に対して,スカラー場 $f(\boldsymbol{r})$ を考える.
$f(\boldsymbol{r})$ の全微分 $df(\boldsymbol{r})$ を次のように表す.
ここに現れる $\boldsymbol{\nabla}f(\boldsymbol{r})$ をスカラー場 $f(\boldsymbol{r})$ の勾配という.
また,$\boldsymbol{\nabla}$ をナブラ演算子という.
勾配を表す英単語 gradient の頭文字を使って, $\text{grad} f(\boldsymbol{r})$ と書かれることもある.
勾配はスカラー場からベクトル場をつくる演算
勾配の定義
において,$df(\boldsymbol{r})$ はスカラー量, $d\boldsymbol{r}$ はベクトル量である.
$d\boldsymbol{r}$ との内積をとってスカラー量をつくるためには,勾配 $\boldsymbol{\nabla}f(\boldsymbol{r})$ はベクトル量でなければならない.
したがって,勾配はスカラー場 $f(\boldsymbol{r})$ からベクトル場 $\boldsymbol{\nabla}f(\boldsymbol{r})$ をつくる演算であることがわかる.
勾配の物理的意味
勾配はベクトル場であるから,その大きさと向きについて考える.
まず,向きについて考える.
$f(\boldsymbol(r))=$定数を満たす位置 $\boldsymbol{r}$ の集合を等高面と呼ぶ.
全微分を考える $d\boldsymbol{r}$ の向きを,等高面内の方向にとると,
となる.
よって,$\boldsymbol{\nabla}f(\boldsymbol{r})$ と $d\boldsymbol{r}$ は直交しており,$\boldsymbol{\nabla}f(\boldsymbol{r})$ は等高面に対して垂直な方向を向いていることがわかる.
次に,大きさについて考える.
任意の $d\boldsymbol{r}$ に対して,$\boldsymbol{\nabla}f(\boldsymbol{r})$ と $d\boldsymbol{r}$ のなす角を $\theta$ とすると,
特定の位置 $\boldsymbol{r}$ において,$\cos\theta=1$ のとき $df(\boldsymbol{r})$ は最大となる.
このとき,
より,勾配の大きさはスカラー場の単位距離あたりの最大増加率を表していることがわかる.
すなわち,等高面が密であればあるほど,$|\boldsymbol{\nabla}f(\boldsymbol{r})|$ は大きくなる.