この記事では,力学の公理である Newton の運動法則(運動の 3 法則)についてまとめます.
Newton の運動法則
次の 3 つの主張をまとめて,Newton の運動法則と言います.
- 第一法則:いかなる物体も力が働かなければ静止または等速度運動を続けるように見える座標系を選ぶことができる
- 第二法則:慣性系において,物体の運動量の時間変化は,その物体に働く力に比例する
- 第三法則:2 つの物体が相互作用するとき,必ず作用と反作用の力が生じて,それらは大きさが同じで向きが反対である
これらの法則について 1 つずつ見ていきます.
第一法則が高校で習った「慣性の法則」と違くない?と思った方は続きに必ず目を通してください!
第一法則について
高校物理で習う第一法則は「慣性の法則」と呼ばれ,
いかなる物体も力が働かなければ静止または等速度運動を続ける
と表現されます.
さて,ある観測者 A から見て静止している物体が,A に対して動いている別の観測者 B からどのように見えるでしょうか?
もちろん観測者 B にとっては,その物体が動いているように見えますよね.
物体の運動について議論するためには,まず座標系を導入する必要があります.
ここでは A と B という二人の観測者がいる,つまり,これは二つの座標系を考えていることに対応します.
先ほどの例で,座標系の取り方によって運動法則が変更を受ける(物体がどのように運動しているように見えるかが変わる)ことがわかりました.
そこで,第一法則の前提である「力が働かなければ」という部分に注目して,第一法則は「力を測る基準系を選ぶことができる」ということを主張している,と再解釈します.
そして,そのような力を測る基準系のことを,「慣性系」と呼びます.
先ほどの例では,観測者 A は慣性系ですが,観測者 B は慣性系とは限りません.
観測者 B は,観測者 A に対して等速度運動をしているなら慣性系ですが,加速度運動をしているなら非慣性系となります.
ここで述べたことを踏まえ,第一法則は次のことを主張していると考えます.
いかなる物体も力が働かなければ静止または等速度運動を続けるように見える座標系を選ぶことができる
第二法則について
第二法則は,
慣性系において,物体の運動量の時間変化は,その物体に働く力に比例する
という主張です.
物体の運動量を $\boldsymbol{p}$ ,働く力を $\boldsymbol{F}$ とすると,この主張は比例定数を 1 として次のように表現されます:
第二法則は運動方程式です
Newton 力学において,物体の運動量 $\boldsymbol{p}=\boldsymbol{p}(t)$ は,
と定義されます.
ここで,$m$ は物体の慣性質量,$\boldsymbol{v}$ は物体の速度です.
慣性質量とは,物体の運動状態の変化のしにくさ(慣性)を表す量です
Newton 力学では慣性質量は物体に固有の量であり,時間には依存しません.
よって,$\eqref{momentum}$ を $\eqref{eom}$ に代入すると,
となり,よく知られた運動方程式の形が得られます.
第三法則について
第三法則は,いわゆる作用・反作用の法則です.
物体 1 と物体 2 が接しているとき,これらの物体には大きさが同じで向きが反対な力が働きます.
物体 1 が物体 2 に及ぼす力を $\boldsymbol{F}_{12}$ ,物体 2 が物体 1 に及ぼす力を $\boldsymbol{F}_{21}$ とすると,第三法則は次のように表現されます:



